金魚鉢には金魚がいない
家族
 姉が出ていってから数日後、両親は警察に捜索願を出していた。


 「あの子、荷物をもっていったみたい。」

 ある日の夕食後、母は私に言った。

 「あの子は、そんなにこの家が嫌だったのかな。お母さん、あの子が何考えてるのか全然理解してあげられなかった。」
 
 表面上は変わらなくても、母は少しづつ、壊れていった。
 夕飯を殆ど食べなくなった母を毎日見て、どんなに心配したって、母の心は一点だけに向けられていて、私は少しだけ、姉を恨んだ。

 時間があれば姉のヤニ臭い部屋をひっくり返して何か手がかりがないかを探す母の背中は、なんだかとても小さく見えて、私はどうにもやるせなくて、そしてやっぱり何もできないでいた。
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