恋愛セラピー

その背中を見送ってからはあっと息を吐いて階段に座り込んだ。


岩田先生って、すごくいい男だったんだな。今まで全然、気がつかなかった。でも、私にとっては理人くんのほうがずっといい男だけど。


少しの間、 階段に座り込んでいると携帯が短く振動した。メールだなと思って携帯を開くと、淳美からメールが届いている。


淳美も、理人くんの噂を知り合いにもう一度たしかめたらしい。勘違いしてボロクソに言って、ごめんという謝罪と、幸せになってね、という言葉が綴られていた。


そのメールに、実は理香の弟だと返すと……それを早く言ってよ、と返信があった。


これで本当に、ひと安心かな。はあっと息をついて、ひとり頬を緩ませる。


「本当に迎えに来てくれなぁ、王子様」


気づくのにかなりの時間がかかってしまったけど、理人くんが私の王子様だった。


そう思う自分を、やっぱり痛いと思いながら立ち上がる。この話は絶対に、誰にも言わずに墓場まで持っていこう。


なんか、すごく理人くんに会いたくなっちゃったなぁ。


さて、帰ってもうひとつの済ませておかなきゃいけないことをやってしまわないと。とりあえず買い物をして帰ろう。


立ち上がって歩き出した私の目に映った景色は、昨日までと違う気がした。


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