恋愛セラピー

「うん、すごくいい。俺の見立てに間違いはなかったな。じゃあ、行こうか。ありがとうございました」


ショップの店員さんに頭を下げた理人を見て、私も頭を下げる。


「こちらこそありがとうございました。是非、またお越しくださいませ」


丁寧に頭を下げた店員さんに見送られて、理人くんと手を繋いで歩き出す。


「お店の人、すごくいい人だった。理人のこと、褒めてたよ」


「そう? たしかにいい人だったね。いい対応をしてもらうと、また利用したいって思えるね。業種は違うけど、見習わないと」


今は、病院も患者さんに選んでもらう時代だからね。手術室の勤務になってからは、患者さんと接する時間が短くなってそんなこと忘れかけていたけど、私も気をつけよう。


理人のこういうふうに考えられるところ、すごく好きだな。


「病院なんて、来ないですむのが一番いいんだけどね。それでも、あの先生に見てもらいたいって思えるような医者になりたいな」


まだまだ技術が伴わないけど、と笑っている理人を見て、今さらながら私の言葉だけで医者になったわけではないんだなと少しホッとする。


優しい顔で患者さんのことを話してくれるし、毎日勉強しているのも知っている。きっと理人は、いい医者になるだろう。


その成長をそばで見守れるんだと思うと、すごく嬉しくなって頬が緩む。

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