恋愛セラピー
「あれ? あんまり香りがしないね」
紫色の花に顔を近づけると、あの特有の香りがしなくて私は首を傾げる。
「ああ、あんまり咲いてる状態だと香らないかも。ほら、こうすると香りがするでしょ?」
葉をこすった彼の手からは私の大好きな香りがして、思わずその手に顔を寄せて、クンクンと鼻を動かす。
「ふふ、好きだよね。皐月さん、ラベンダー」
「うん、すごく好き。なんかこの匂いを嗅ぐとふわぁってして、嫌なこととか全部どこかに飛んでっちゃうの」
紫色の花、ラベンダーを指で突っついて満面の笑みを浮かべる私を見て、彼は小さなため息をついた。
「……なんか俺、今すごくラベンダーになりたい。じゃあ、早速摘もう。一日か二日は乾燥させないといけないからね」
その言葉に頷いて、咲き誇るラベンダーを摘んで両腕に抱える。大好きなラベンダーの香りに包まれて、幸せな気持ちになる。
はあ、本当にいい香りだな。