恋愛セラピー

「愛してるよ、皐月。一生、大切にするからね。ちょっと重いけど、逃げ出さないでね」


「……うん、大丈夫だよ。ちょうどいいんだよ、私たちは」


理人の言う重さが、私にはとても心地いいもの。キスがしたくて私の言葉に笑った理人の首に手を回すと、理人が焦ったように身体を離す。


「わあ! 皐月、血が逆流してる」


「あ、点滴してるの忘れてた」


腕を持ち上げてしまったから、点滴の管に血液が逆流してしまっている。苦笑いしながら腕を下ろした私に、理人は息を吐きながら眉を下げた。


「大分、落ち着いてきたみたいだね。少し顔色が良くなってきた。でも、まだ寝てな」


「うん。でも、キスしてほしいんだけど」


ねだるように、甘えるように理人を見上げると、うれしそうに目を細めた理人の手が私の頬に触れて、唇が重なった。


「眠っていいよ、皐月。点滴が終わったら抜いておくから。手、繋いでてあげるね」


子どもを寝かしつけるようにポン、ポンと、横を向いている私の背中を規則的に理人が叩く。



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