恋愛セラピー
それが意外にも心地よくて、瞼が自然と下りてくる。
「おやすみ、皐月」
目を閉じる間際に見えた理人の顔は、今まで見たどんな顔より優しくて……それがとてもかっこよく見えた。
ああ、また理人のことを好きになった。
限界の見えないその気持ちを心の奥底で噛みしめる。
すごく心が穏やかなのは、ほのかに香るアロマのおかげなのだろうか。手を握ってくれている理人のおかげなんだろうか。
ネロリの香りと、理人のぬくもりを感じながら私は深い眠りについた。
「……かわいいなぁ。世界一、かわいい。待ってて、よかった。何回、二歳の年の差を呪ったか。皐月に男を見る目がなくてよかった。理香が、ろくでもない彼氏と別れるように勧めていたのは俺のためって知ったら……さすがに引くかな。俺の最大の難関は理香だったんだよな。皐月に見合う男になるまでは会わせないって……。姉弟揃って、いや、家族揃って皐月のことが大好きでさ。まあ、俺が一番だけど。皐月を俺のお嫁さんにすることは、五十嵐家の悲願だったんだよ。この秘密は、墓場まで持っていくかな」
ぽつりと呟いた理人の独白は、すでに深い眠りに落ちていた私には聞こえるはずもなかった。