恋愛セラピー
「すみません、ちょっと威嚇していたもので。素敵ですね、皐月さん。すごく、かわいいです。全然気づいてないみたいでしたけど、注目集めてましたよ」
理人くんの言葉に私はサッと青くなる。
「え、やだ。値札とかついてる? ファスナー空いてる? なんか、変?」
青くなってファスナーが閉まっているかを確かめたり、スカートがまくれたりしていないかを確認する私に、理人くんがぷっと吹き出す。
「そういうところ、相変わらずですね。やっぱり皐月さん、かわいいわ。注目を集めてるのは綺麗だからですよ。こうするともっといい」
ふいに手を伸ばしてきた理人くんの手が、私の髪を左側に寄せる。
こないだみたいにうなじを撫でられて、ビクッと身体が跳ねた。
それを見てクスッと笑った理人くんのことを、ムッとしながら睨む。今の、絶対にわざとだ。
「理人くん、なんかキザになった」
昔は、ちょっと手が触れただけでもすぐ赤くなっていたのに、今は平然とこんなことしちゃうんだ。なんかちょっと複雑なんですけど。
「そうですか? まあ、俺ももう二十八歳ですからね、それなりに成長してるんですよ。じゃあ、行きますか」
さりげない仕草で、私の肩を抱いた理人くんに促されて歩き始めるけど、なんか女の扱いになれているって感じ。