恋愛セラピー
「はい。じゃあ、お言葉に甘えて帰りますね。夜勤、頑張ってください」
「はいよー。お疲れ様」
大沢さんに挨拶をしてから更衣室に入って、邪魔にならないようにぴっちりとまとめていた髪をほどく。
「あー、疲れた」
ひとりになると疲れがどっときて、ため息をつきながら更衣室に置いてある椅子にドスン、と座り込む。
足がむくんでパンパンだし、すごいしんどい。
まあ、十時間近く水も飲まず、ご飯も食べずに立ちっぱなしだったんだから、しんどいのは当然か。
私、古賀皐月(こが さつき)は総合病院に勤める看護師だ。
看護大学を卒業して八年。二年間の病棟勤務を経てから、手術室に配属されて、早六年の月日が流れた。
異動になった頃は、毎日怒られてばかりだったけど、必死の努力のかいあってか、最近では大きな手術に指名されることも多くなった。充実した毎日を送ってはいるけれど、今年で三十歳。
いわゆる三十路。色んな意味で、人生の曲がり角。
最近ちょっぴり、身体がしんどい。今だって椅子から立ち上がるのがしんどくて、座りながら着替えている。
ちょっと前まではこんなことはなかったのに、身体って確実に年老いているんだな。