恋愛セラピー
「お疲れ様、古賀ちゃん。長丁場のオペだったから疲れたでしょう」
凝り固まったら身体を、少しでもなんとかしようと背伸びする私を、夕方からの勤務の大沢さんが優しい笑顔で労ってくれる。
「そうですね。さすがに十時間となると……色々きつい。年ですかね」
私が肩をすくめながら自嘲ぎみに笑うと、大沢さんが私のことを軽く睨んでくる。
「私より五つも年下なくせに、なに言ってんのよ。あとはやるから帰っていいって言おうと思ったけど、やめようかな」
それを聞いて、私は慌てて大沢さんにすがりつく。
「嘘、嘘。ごめんなさい、大沢先輩。先輩、めちゃくちゃ優しいですもんね。今、大沢さんが女神様に見えます。本当、いつも頼りにしてるんですよ」
分かりやすすぎるよいしょをする私に、大沢さんはあきれた目を向けつつも笑ってくれる。
「はいはい、あとは女神様がやっておきますからね。早く帰って休みなさい。明日も器械出しのご指名、されてるんでしょう? 古賀ちゃん、うちのエースだからね」
大沢さんのその言葉に私はうなずく。たしかに明日も大きな手術の予定が入っていて、私は器械出しにつくことになっている。