恋愛セラピー

「今回はローズです。アブソリュートも香りが良くていいんですけどね、トリートメントにはオットーの方が向いてるのでそっちにしました」


ローズの精油には大きく分けると、アブソリュートとオットーの二種類があって、芳醇な香りが特徴のアブソリュートはトリートメントより香水なんかに向いているんだそうだ。


いつものように、理人くんは私にビーカーを近づけて香りをたしかめさせてくれる。


人工的ではない、爽やかな本物のバラの香りに思わず息を大きく吸い込む。


「いい香り。でもローズって高価なんだよね?」


「よく、知ってますね。ローズの香りが嫌いな人はあまりいませんよね。ローズは、一滴のオイルを抽出させるのに、バラの花が五十本必要ですからね。その贅沢さから、精油の女王ともいわれてます。なので今回は、ブレンドはしません」


なんでそんな高価なオイルを、私なんかに使ってくれるんだろうな。


デート代は相変わらず、理人くんが払ってくれている。いくら医者とはいえ、この一ヶ月でそこそこの額を使っているはずだ。ただ、姉の親友っていうだけの女に、なんでここまでしてくれるんだろう。


ますますもって、理人くんの目的が分からない。


だけど、聞く勇気もないしこの関係を終わらせることもできない。


これ以上、好きになってはいけないと歯止めをかけてはいる。でも、そばにいればやっぱりときめくし、ドキドキもしてしまう。


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