恋愛セラピー

「ちょっと、それセクハラですけど。たしかに体重増えたけどさ……」


照れ隠しにそう言って唇を尖らせる。だけど、私が太ったのは絶対に理人くんのせいなんだけど。


家にお邪魔するたびに、私にあれやこれやと食べさせているのは理人くんでしょう。それがまた、おいしいからついつい完食してしまって、気づけばこの一ヶ月で体重が三キロも増えてしまった。


「細すぎでしたから、もうちょっと増えてもいいくらいですけどね。変な太り方じゃないし、いいじゃないですか」


たしかに理人くんの言う通りではあるんだけど……太ったというよりは、身体つきが丸みを帯びて女らしくなったような気がする。


理人くんが、女はホルモンで生きているなんて言っていたけど、本当に女にとって女性ホルモンというものは大事なんだな。


毎回、そういう系の精油ばっかり使っているし、枯れているとは思っていたけど、私って本当に枯れきっていたんだな。


それがバレているあたりが恥ずかしいけど、それも今さらか。


なんかもう、理人くんには隠し事とか、できない気がする。私の体調の変化にも敏感に気づいてしくれる彼の隣は、どうにも居心地がよい。


もちろん、身体が辛いということもある。だけどそれ以上に、私は理人くんと一緒にいる時間を大切に思っている。


それが一ヶ月、この曖昧な関係をズルズルと続けてきた大きな理由だ。

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