キミの笑顔が見たいだけ。
脳腫瘍について調べてみた。
どのサイトを見ても、どの文献を読んでも、矢沢先生が言っていたようなことばかり書かれていて。
ドクンドクンと鼓動が大きくなっていく。
私の腫瘍の場合、治るのは極めてまれ。
悪性度が高く、発症すると治療をしても数ヶ月〜1年で亡くなってしまう例がほとんどだった。
突き付けられた現実に目の前が真っ暗になって息が出来なくなる。
一度聞いて知っていたはずなのに、強い衝撃が心臓を貫いた。
ページをめくる手が止まらず、時間を忘れてあらゆることを調べた。
放射線治療で一度は小さくなって症状が軽快するものの、やがて腫瘍が放射線に対する抵抗力を持つようになるため、効果がなくなる。
放射線で腫瘍が小さくなって症状がない間に、やり残したことや余生を楽しむのがベスト。
まるで他人事のように書いてあるサイトに憤りを覚えた。
化学療法は効果がなく、やるだけムダだと書いてある文献もあった。
絶望的な気持ちで検索を進める。
あ、この先生……。
あたしを診察してくれた矢沢先生だ……。
神の手を持つ脳外科医のスペシャリストとして、仕事場の様子をドキュメンタリーで撮影したものがネットにアップされていた。
過去にテレビで放送されたやつの録画映像らしい。
先生に救いを求めてやって来る患者さんは、後を絶たないんだとか……。
他の病院で取り除くことが不可能だと判断された腫瘍を、重要な神経や血管を傷付けることなく取り除く神の手を持つ先生。
そんなにすごい先生なのに、あたしの病気は治せないの……?
ねぇ……なんで?
すごい先生なら治せるでしょ?
どうして……余命だなんて言うの。
希望を持てなんて言わずに、先生が治してよ。