甘いりんごに恋をした


「先輩そこにいますね?」


「え?なんでわかったの?」


「匂いですよ」


「まねすんなよ(笑)」


そう言って私の頭をポンッと叩く。



「先輩がいるって分かったことを褒めてくださいよ」


「あーすごいすごい」



ガラッ


「依吹くん、
君はいつも…今は授業中ですよ。」



「学級委員長さんじゃないですか」



あれ?この人



「用もないのに保健室に入るのはやめて頂きたい」



「俺、林檎にようあるもーん」



「そういうのは僕にはきかない」



「あの…この前の人ですよね?」



「あ、ああ…君だったか。
あの時はありがとう」



「いえ」




「え?なに?俺に内緒で会ってたの?」




「内緒って…そういうんじゃありませんよ」




「誤解してくれても構わないが
とにかく授業に戻ってくれないか」



「嫌でーす、俺は林檎と居るの」



「うるさい。行くぞ」



彼は依吹先輩を保健室からつまみ出した。

さ、流石だ。





「りんご、途中でいなくなってごめんね」


「面白かったので大丈夫です」


「そう?あ、りんご食べる」


「食べます」


たまに依吹先輩はりんごを持ってくる。


甘酸っぱい。



君に恋したこの心も、りんごのようだ


甘酸っぱい。






「美味しいですね」


「だろ、俺の家で作ってんだ」


「え?そうなんですか?」


「そう。だから木はお友達」



なるほど、出会った時も木の上にいたのはそういうことか



「じゃあ、りんご取り放題ですね」


「おやつはりんご尽くし」


「アップルパイとか?」


「あー、俺食べたことないや」


「今度作ってあげますよ?」


「料理できんの?!」


「失礼な(笑)できますー」


「じゃ、お願い」



アップルパイなんていつぶりだろう?


あの時以来作ってないな



母が亡くなったあの日以来。



母は私が小6の夏に亡くなった


私は母とアップルパイを作る時間が好きだった。


だからかな?ひとりで作ろうとも思わなかった。







アップルパイか、喜んでくれるといいな。



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