現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
休憩が終わり、課長の指示通り試製の研磨に入る。

普段の研磨より少し深く削るため、少しずつ削っては注意深く目視をし、研磨をかけた部分の厚さを測り、今まで以上に時間をかけて磨き上げる。

思った以上に神経を使う。
一個ずつおわるたびに、プレッシャーと機械からの熱で流れた汗を袖で拭った。

お陰で顔は、袖についた研磨カスで汚れている。

それでも、課長が私にと与えてくれた重要な仕事。任されたことが嬉しかった。


全ての部品の研磨が終わった頃には、もう昼休みを迎えていた。

おばちゃんズのひとり、吉田さんに昼食後目視チェックをしてもらうようにお願いをし、軽く昼食を摂った後トイレに行き汚れた顔を水で洗う。

水は凍えるほどに冷たいけれど、汗をかいている自分にはちょうどいい冷たさだ。

ハンカチで顔を拭きながら、鏡に自分の顔を映した。

相変わらずひどい顔。
こんなことなら、ファンデーションくらい持ってくればよかった。

……なんて、今までそんなこと気にもしなかったのに、いまさらな自分に笑える。

別に岡田さんに会えるってわけじゃないのにね。
なにを考えているんだか、自分は。

「さて、行く準備しなきゃ」

気を取り直し、更衣室へと行き綺麗な作業着に着替える。
午後になって、チェックの終わった部品を吉田さんから受け取ると、社用車に乗り込んだ。

社用車はもちろんKIZUKI製。
静かなエンジン音に、技術の高さがうかがえる。

KIZUKIの工場に行くのは、これが二回目。
一回目は入社したての頃、新入社員の教育の一環で見学に行ったきりだ。

今いる工場とは比べ物にならないほどの、広大な敷地に立つ工場。
社員も物凄い数の人がいる。

加えて工場内もとても綺麗で、あまりの違いに圧倒されたほどだ。
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