現場系男子にご用心!?【長編改訂版】
母は慌てて布巾を取りに台所へと走る。
父はその場を軽くティッシュで拭きながらも、戸惑いを隠せないようだった。

…そこまでビックリすることかな。
別に今まで彼氏がいなかったわけじゃないんだけど。

両親の反応に少し腹立たしく思いつつも、なんだかんだで私を気に掛けてくれていたんだってことを知る。

「で、お相手はどんな人なの?」

「KIZUKIの社員さんだよ。工場によく来てて、それで仲良くなったって感じかな」

「な、き、KIZUKIだと……!?えらい男を捕まえたもんだ!里緒奈、でかしたぞ!!」

「でかしたって……」

「まあ!!まあ!!里緒奈凄いじゃない!!絶対に離しちゃダメよ!もう~、そんなことなら今日連れてくれば良かったのに~!!」

「ちょ、ちょっと母さんまで!気が早すぎるってば!!……本当はあっちが、この長期休みを利用してお互いの両親に会いに行こうって言ってくれたんだけど、まだ付き合ってそんなに経ってないから、断ったんだ」

私がそう言うと、母は少し呆れたように笑う。

「もう~。いつも慎重よね、里緒奈は。こういうのってタイミングよ?勢いで行くのも大事なのに」

「そ、そう?もっと順序良くやっていくものだと思ってたんだけど」

「相手がそう言うってことは、もうこれから先ずっと一緒にいるって決めているからでしょう。物凄く大事にされているじゃない。過程じゃないのよ、大事なのはお互いの気持ちよ」

「でも、なんか急いでいるように感じてさ。なにかあるのかなって思って」

「……それはもしかしたら、前の恋愛が長く付き合い過ぎて、上手くいかなかったのかもしれないね。だから前のようになりたくなくてその先を急いでいるのかも。真実は分からないけど」

「ああ、そうか……」

母にそう言われると、なんとなく理解出来る。

……そういえば、秋元さんも結婚こそしたけれど上手くいかなかったんだっけ。
長く付き合った人全員に言えることではないけれど、少なからずそういった理由もあるのかもしれないな。

「まあ、いずれにせよ、この休みでゆっくり考えなさい。私たちはいつ連れて来ても大歓迎だからね」

「うん……」
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