スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―


「わたしが俊文くんを見ていて飽きないのは、安心感と意外性、両方を持っているからよ」


「安心感はわかるけど、意外性とか、俊くんにある?」


「ほら、それが見えないなぎさ先生には、男としての俊文くんの魅力は、やっぱりわからないの」


「わかりませーん」


「たいしたことじゃないんだけどね。額の汗を腕で拭う瞬間に、上を向いて目を閉じるときの色気とか。

少年っぽい笑顔なのに、実はとってもお酒が強くて、酔っ払いのお客さんの相手も平然とするところとか。たまに大将さんに対して荒っぽい口を利くところとか」


言われてみたら、もやーっとイメージできる。

だけど、もやーって程度だ。

美香子先生がキュンときたシーンは、わたしの心には引っ掛かってない。


「美香子先生、俊くんのこと、ほんとによく見てるんだね」


「見逃したくないもの。かわいい瞬間もカッコいい瞬間も、全部」


いいなあ。

恋する美香子先生の笑顔はきれいでかわいくて、わたしもそんなふうに笑えたらなって思った。


少しだけ、チクッと胸が痛い。

大事な弟みたいな幼なじみ、俊くんにとっての特別は、今まではわたしだけだったけど、たぶんもうすぐ変わってしまう。

俊くん、美香子先生に持っていかれちゃうんだ。


美香子先生なら、いいかな。

俊くんのこと、きっと大切に愛してくれるから。


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