スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―

「演奏は超一流だ。聴いて驚けよ」



ステージの奥に引かれたボルドーのカーテンが揺れて、1人、また1人と、バンドメンバーが姿を現した。

笑顔で客席に手を挙げてみせたり、仏頂面でうつむいていたり、メンバー同士でしゃべっていたり、三々五々。


「外人さん……」


白人、黒人、どっちかわかんない人、ラテンアメリカっぽい人と、東洋系の人が1人。

ポスターもろくに見てこなかったから、これからどんなバンドが演奏するのか、ちっとも知らなかった。


ライリとかいうイケメンが、フッと息を洩らすように笑った。


「ニューヨークを根城にしてるビッグバンド、ウォーターサイド・ジャズ・オーケストラだ。こんなふうに人種ミックスでやってるバンドは、世界的に見ても珍しい。演奏は超一流だ。聴いて驚けよ」


メンバーのほとんどが、うちの父親くらいの世代に見える。

もっと年上っぽい人もいる。

コントラバスの人とトロンボーンのうちの1人は若くて、行ってても30代前半だろうと思う。

だけど、ゆるゆるな空気だ。

ほんとに今から超一流の演奏が始まるんだろうか?


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