スウィングしなけりゃときめかない!―教師なワタシと身勝手ホゴシャ―


プールの授業が始まる前でよかった。

プールの日には朝から家で体温を測ってきてもらうし、体調が危うい子は直前にも測らせる。

直前検温のリストの筆頭に、らみちゃんを載せておかないといけない。


頼利さんがコーヒーを口に含んだ。

今度は飲める温度だったらしい。

ほどよく厚みのある唇が左右非対称に軽く歪んで、短いため息を吐き出した。


「あんたが、らみのことをきちんと心配してんのは、よくわかった。家庭訪問だ何だとうるせぇのも、ノルマだからしつこいってわけじゃなかったんだな?」


「ノルマって言葉、子ども相手の教員の仕事においては絶対、使っちゃいけないでしょう!

機械的に仕事を処理するような考え方する先生に、子どもたちがついて来てくれるはずないんだから!」


「だぁぁ、いちいち声がデケェんだよ、あんたは」


「すみませんねー。職業病ですー」


「その言い方、小学生か」


「あなただって十っ分に子どもっぽいでしょう!? 今のこの状況、まともな社会人だったら、普通は丁寧語でしゃべってる場面ですよね?」


「あいにくだが、おれはまともな社会人とやらじゃねぇよ。不良崩れのミュージシャンに何を過剰な期待してんだ?」


< 67 / 240 >

この作品をシェア

pagetop