メロウ
メロウ




たとえば空が青いとか、そんなどうでもいいような理由で君に好きだと言えた日を思い出す。きらきら光った太陽と、それを見上げる向日葵と、僕と君がいて、僕はそれが幸せで、なんの疑いもなく、躊躇いも後ろめたさもなく、君を好きだった日を思い出す。


「キスしてもいい?」


呼吸をするのと同じ気持ちで、そんなことを純粋に言えた日が、あっという間に遠くなってしまった。君が僕を拒んだ理由が、今ならわかるよ。あのとき君が泣いていた理由も、今ならわかる。あの日の僕に教えてあげたいくらいだ。

こんな風に、日記に綴るようにあの日を思い出すことが何度もあったけれど、それも今日で最後と決めていたんだ。僕らは大人になったから。君は幸せになるのだから。



「来てくれてありがとう」

「あぁ。晴れてよかったな」


汚れのない、ただひたすらな白を纏った君があんまり綺麗で、僕はあの日と同じように君が好きだと言いかけて、でも言えなかった。にっこり笑う君があんまり幸せそうだから、僕はあの日と同じようにその唇を目で追ったけれど、何も言わなかった。
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