二度目は誠実に
拓人の言動はいつも軽い調子だが、それを不快に感じる者はほとんどいない。

黒縁の眼鏡をかけて、短髪の拓人は一見真面目そうに見える。真面目は真面目なのだが、口を開くと軽い印象を与える。そんな拓人でも仕事に対しての信頼は厚く、男女問わず人気がある。

沙弓も信頼はしているが、軽い話し方が苦手だった。何度かきちんと話してくださいと指摘していたものの軽く交わされる結果となり、今に至っている。


「というわけだから、谷。課長が心配しているから一時間くらいしたら、ミーティングテーブルで軽く引き継ぎをしよう」


「はい。……分かりました」


顔を合わせるのが気まずくても、仕事ならば仕方がない。


急ぎの業務だけ終わらせた一時間後、二人はテーブルを挟んで向き合った。


「引き継ぎするほどの内容でもないんだけどね」


「だったら、しなくてもいいのに」


「でもさ、ほら、課長は心配性だからね。一応したというスタイルだけでも見せておけば安心するからさ。まあ、ちゃんと谷の願いは叶えたんだから、頼むよ」


拓人の叶えた願いは寝たこと。
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