二度目は誠実に
「谷さんも一緒に行きませんか?」


「えっ、私? いえ、私は行くところが決まっているので」


沙弓は一人で行くつもりだった。それなのに、なぜ?

どこに行くのかと聞かれ、親子丼の店と答えてしまったのがいけないのは分かっている。でも、聞かれたから答えたのがいけないわけじゃない。


沙弓は目の前に座る拓人を窺い見る。拓人は隣に座っている純太と大盛りにしようかと話していた。


「谷は普通? それとも少なめ?」


「私は普通で」


沙弓の答えを聞いて、拓人が大盛り二つと普通盛り一つをオーダーする。

親子丼の店はその名のとおりで、親子丼しかメニューにはない。一応ランチメニューなるものはあるが、通常の親子丼にサラダがつくだけといった簡単なものである。

「サラダをつけますか?」と店員に言われ、拓人は三人分頼んだ。

沙弓は元々サラダもつけるつもりだったが、自分だけつけるのを躊躇っていたので、聞いてくれた店員に心の中で感謝した。


「ここのポテトサラダ、美味しいですよね」
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