二度目は誠実に
純太はオフィスのエレベーター近くで平井という同期の社員に呼び止められて、拓人と沙弓に断ってその場に残る。

他にエレベーターを待っている人がいなかったから、エレベーター内は二人だけになる可能性が大きい。徐々に１階に降りてくる表示を見ていた沙弓は突然声を出した。


「あ、そうだ！ 私、ちょっとコンビニに行くので、失礼します。今日はありがとうご……」


「待って。なんで避けるの？」


沙弓が拓人を避けているのは容易にばれていた。拓人は最後まで言わせないうちに沙弓の腕を掴む。

そのとき、エレベーターのドアが開き、三人ほど降りて誰もいなくなった。


「ほら、乗るよ」


「えっ？」


まさか掴まれるとは思っていなかった沙弓は、呆然としているうちにエレベーター内に引っ張られてしまっていた。

拓人は素早く閉じると10のボタンを押す。中は沙弓の予想通り二人だけ。


「あっ！ なんで！」


「なんでそこで逃げようとするのかなー」


エレベーターが上昇し始めて、沙弓は我に返った。
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