二度目は誠実に
もう会いたくないと思う日に限ってまた会ってしまうものだ。


「あれ、お疲れー」


「お疲れさまです……」


「帰りに会うなんて、嬉しいね。ねえ、せっかくだからご飯食べて帰らない?」


「今日は疲れているので、真っ直ぐ帰る予定です」


沙弓が一人でエレベーターに乗ると、下の階で止まり、拓人が乗ってきた。本日二度目の二人だけのエレベーターだった
拓人はこの偶然を嬉しく思うが、沙弓は今日は厄日かもしれないと思った。

会いたくないときに会うなんて……しかも夕食まで誘われるとか……拓人の相手をするのは疲れる。だから、早く帰って家でのんびりしたかった。

そう、だから沙弓は誘いを断ったのだ。

しかし……


「何でついてくるんですか? 大石さんの家はこっちではないですよね?」


拓人は沙弓と同じ電車に乗り、沙弓の隣に立つ。


「この時間って座れることないでしょ? それ、貸して。疲れている谷が心配だから送るよ」


拓人は沙弓の黒いカバンを持つ。沙弓がどこかで倒れたら大変だからという拓人なりの優しさだが、なんだか下心がありそうに見える。
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