二度目は誠実に
拓人は、退屈しないように話し掛けたが、素っ気ない返事しか返ってこなかった。けれど、沙弓と出掛けられるのが嬉しいからどんな返事でも気にならなかった。

アクアラインを通り、目的地である観光牧場に着いた。


「ここですか?」


「うん、来たことある?」


「子供のときに来たことがあるくらいで久しぶりです。でも、まさかここに来るとは思ってなかったです」


ここまで来るまでの車内とは違う反応を見せる沙弓に拓人は笑う。


「ちょっと意外性を狙ってみたんだけどね。でもさ、谷、動物好きでしょ?」


「何で?」


確かに沙弓は動物が好きだった。だけど、拓人にそんな話をしたことはない。どこからの情報で動物好きだと思ったのだろう。


「だってさ、前に旅行でどこかの動物園に行ってきて、楽しかったと話していたよね」


沙弓にはそんな話をした記憶がなかったが、入社した年に動物園へ行って、お土産にといろんな動物の形をしたクッキーを買ったことはある。

でも、本当にかなり前でそれを拓人が覚えていたのは信じられなかった。
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