二度目は誠実に
沙弓は車から降りて、女の子を抱き上げる拓人を見て、腕がわなわなと震わした。

なんなの!

デートの最中に隠し子に会わせるとかいったい何がしたいのよ!


険しい表情で自分と女の子を見ている沙弓に気付いた拓人は狼狽した。


「ちょっ、待った! 待て、待て、待て! 待って! 待て!」


しっかりと女の子を抱いていた拓人は、落とさないようにしながら、犬にしつけるような待て!のジェスチャーをした。


「なんなんですか? 私は犬ではありません」


「もちろん犬だなんて思ってないよ。でも、なんか誤解してるだろ?」


「このお姉ちゃん、ワンちゃんに見えないよー」


「おお、もちろん見てのとおり、ちゃんとした人間だよ」


似てる……目元がそっくりだ。紛れもしない親子だ。

沙弓は並ぶ二人の顔を見て、親子にしか見えないと思った。

「ちょっと! いいから、早く入って」


「えっ? あの……」


「ほら、早く! えーっと、谷さんだっけ? 下の名前はなに?」


「沙弓ですけど」
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