二度目は誠実に
沙弓は突然後ろに立っていた女性に腕を引っ張られて、家の中へと押し込まれた。


「沙弓ちゃん、お風呂入れるから入って! 着替えも用意してあるからね。はい、どうぞどうぞ」


家の中に足を踏み入れると今度はバスルームへと背中を押されて、沙弓は強引に入れさせられてしまった。

仕方なくまだ濡れている服を脱ぎ、湯船に浸かった。今置かれている状況を整理しようとするが、なかなか整理が出来ない。

ただやっぱり拓人は誠実じゃないとだけ思った。自分に対してもあの母子に対しても誠実ではない。

動物好きの沙弓のことを考えて、観光牧場に連れてきてくれて、それなりに楽しんで拓人の優しさにも触れて、ちょっと誠実かな? すぐに返事をしないで考えてみようかとも思っていた。

だけど、そんな考えは一変する。

ここから一人で帰れる方法はないだろうか。

拓人の車にはもう乗りたくなかった。一人で帰りたかった。
< 83 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop