二度目は誠実に
「美味しそう! 短時間でこれだけ出来るなんて、さすがだよね! 谷は期待を裏切らないねー。そうだ、あ……ビールでもと思ったけど、やめとくね」


「あ、飲みたいなら飲みましょうよ」


「でも、飲んだら送れないし」


「電車でもタクシーでも帰れます。そんなに遠くないですから」


秋刀魚にはビールが合うと沙弓も思った。それに自分から言い出したとはいえ、拓人の部屋にいることに緊張しているから、アルコールの力で緊張を和らげたかった。


「うまい! なにこの揚げ出し豆腐、すごいうまいんだけど。俺、もうめちゃくちゃ嬉しいし、すげー幸せな気分」


「そんな大げさな……」


美味しいと言ってくれるのは嬉しかったけど、素直にありがとうと返せなかった。

そんな沙弓に拓人はにっこりと笑い、何度も美味しいと言った。


「先週柴田部長の弟の結婚式だったの知ってる?」


「知ってます。内田くんが大騒ぎしてましたから。ドラマか映画のワンシーンみたいだったと。すごかったみたいですね」
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