二度目は誠実に
「今日楽しかったので、お礼というわけじゃないんですけど、ご飯は私が作ってもいいですか?」


「えっ、作ってくれるの? 谷んちにあがってもいいの?」


「じゃなくて、大石さんの家で」


「俺の家? マジで? うちでいいの? 俺はかまわないけど、マジでいいの?」


沙弓の決意は思いの外大きいものだったし、拓人にとっては嬉しいくらい予想外だった。二人はスーパーで食材を仕入れて、拓人の部屋に行った。

まさかの展開になぜか舞い上がっていた拓人は、挙動不審になっていた。

「酢はある?」と聞かれ、「うん、濃い口ならあるよ」答えて、「それって醤油じゃないですか」と笑われた。本気で答えていたから恥ずかしくなり、ただ一緒に笑うしかなかった。

拓人の希望は和食だった。

ひととおりの調理道具が揃っていることに沙弓は感動し、手際よく料理を始めた。


秋刀魚の塩焼き、揚げ出し豆腐、酢の物、サラダ、味噌汁、ご飯が二人用のダイニングテーブルに並ぶ。
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