ダブル王子さまにはご注意を!
プロローグ~常敗の女







「ごめん……君のことは仕事仲間としか見られないんだ」


パキン、と割れた音。たぶんそれは私のハートだ。


家電量販店に入社して2年半に渡る片思いで、結構仲がよいとみんなに言われて、イケるんじゃない? って皆に後押しされての告白の結果。

ここは送別会を開催したお店の前。ほろ酔い気分で気が大きくなり、「転勤で会えなくなるのは寂しいね」というからぽろりと「じゃあよかったら付き合わないですか?」なんて軽く訊いた結果――いつも通りにフラれたわけで。


フラレる時の常套句“君をそういう対象に見れない”というセオリーを、見事に守ってくれたのは1年先輩の早乙女さん。


しん、と静まり返った10月の空の下。冷えていく心と体を悟られないために、私はニカッと笑う。


「なぁーにそんな深刻そうにしてるんですか! 冗談ですって! パートさん達の話を真に受けちゃダメですよ。私だってちょっとイイかなって思ったくらいで真剣じゃありませんから」

ばんばん、と彼の背中を軽く叩く。ジョーク混じりで話すいつものように。


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