咲くやこの花、誠の旗に
「おい娘、明らかに妙な格好をしているな?一度奉行所まで来てもらおうか。」
「…はい?」
歴史の成績がそこまで良くなかった咲耶でも、奉行所が現代でいうところの警察署だということは知っていた。
(奉行所って…、ここ、現代だよね?)
そう思いはするが、咲耶の頭の中には既に"タイムスリップ"という非現実的なワードが浮かんでいたのだ。
「さぁ、こちらへ付いて来い」
男が咲耶の方へと手を伸ばす。
(タイムスリップなんて現実的じゃないことは信じたくないけれど、とにかくこの状況は危ない気がする…!)
直感でそう感じた咲耶は素早く立ち上がり、人混みを割いて男たちと反対側へとにかく走った。
「おい!待て!」
すぐにそう叫ぶ声が聞こえてくるが咲耶は無視して走り続ける。
建物を利用してなんとか男たちを撒いた咲耶は、胸に手を当て呼吸を落ち着かせた。
落ち着いてからもう一度考えてはみるが、やはりタイムスリップ以外この状況を表すことが出来るものは浮かばない。