農民生まれの魔女

「は!」
私は飛び起きた
まずここは何処なのかと頭が混乱、
と同時にあれは夢だったんだと安堵した
出来ればあのまま死にたかったという思いが脳裏をよぎるが
お母さんとお父さんが最後に言った言葉を思い出し、そんなこと思うなとイヴは自分の頬を叩いた

「いたっ」
頭に痛みが走る
ズキズキしてイヴは咄嗟に両手で頭を支えた

記憶が消えてゆく様な気持ち悪い感覚に目眩がした。そして痛みが無くなった時


「あれここどこだろう?
さっきまで私お母さんに頼まれて水汲みに行ってたのに」

極度のストレスで、イヴの脳裏からあの一抹の事件の記憶が消え去った


「ふかふか、何だろうこれ?」

なぜか私が寝ていたのは豪華な大っきいなんかの上だった
上品なシルクの肌触りがして今まで感じたことのない居心地だ



イヴは体に痛みを感じて洋服をめくったら
そのの小さな体には無数の傷が出来ていた

尋常じゃない傷の量だったが、またいつものようにどっかで傷を作ったんだなぐらいにしかイヴは思わなかった


「そんなことより、ここ何処
危ない所だったら逃げなきゃ!」

ドアから出ようとしたら勢いよく誰かとぶつかった
その拍子に相手の持っていた物が崩れるようにして落ちた


「いたた、わぁ!ごめんなさいませ姫様
私としたことが、とんだご無礼を
お許し下さい!」

いきなり土下座された、何だこの状況は!

はたから見ると自分がいじめているようで良い気がしない


しかもお姫様なんて遠い存在見たことも無いのにましてや自分がなるなんて



「頭を上げて下さい、私は姫ではありません
人違いです」

そう言うと待女みたいな格好の人が
首を傾げて不思議そうな目で私を見た

「何をおっしゃっているのですか姫様
私姫様が寝ていられた時ずっとお側に居させてもらいましたし。姫様が姫様じゃないはずありません
私ちゃんとご主人にこの部屋だと聞かされてましたし…」

侍女は急に不安になったのか声がだんだん小さくなっていった
しまいには青ざめて"確認して来ますので少々お待ちくださいませ"と言って落ちた薬たちを拾って足早に去っていった


そしてここは侍女が去った後、嵐が去った後のように静まり返った

私はどうすれば良いのだろう…

< 9 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop