好き ということ。
◆ 10年後 ・・・
偶然、部屋を整理していると自分宛の手紙を見付けた。
書いたことすら記憶になく、手紙を読んでこに来てしまった。
冬休みの学校は、物悲しくて好きではない。
すべてが灰色に染まり、廃墟のような気がする。
金網越しにグランドを覗き込むと、陸上部員たちが一生懸命に走っていた。
坂道を登り切り校門をくぐると、あの頃に戻ったような気がしてくる。
周囲を見渡し、誰もいない事を確認して中に入った。
校舎はあの頃と同じで、何も変わっていない。
「失礼しまーす」と誰もいない廊下でささやき、懐かしい階段を上がって行く。
2年3組があった教室には、今も同じプラスチックのプレートが掛けられている。教室の中を覗くと、当然のように誰もいなかった。
私はそのまま、教室の中に入った。
こんなところを見付かったら通報ものだけど、まあ、卒業生だと言って頭を下げれば許してもらえるだろう。
うん、たぶん、大丈夫だ。
一歩ずつ奥へと進み、智洋が座っていた席で立ち止まる。
「智洋・・・」
思わずこぼれた名前に自分で驚き、その席から離れた。
そして、一番奥にある窓際の席に座る。
懐かしい景色。
教室の中をグルリと見渡し、視線を窓の外に向ける。
陸上部員たちが、あの頃と同じように走っている。
「泣いてばかりいる私を笑いますか。
10年後の私は、今の私を見て笑いますか・・・か」
手紙の内容を思い出し、書かれていた言葉を反芻する。
「残念なことに、答えなんて見付からない。
でもね、それを探して人は生きてるんだよ・・・それが10年後の、今の私の答え」
そうつぶやきながら、教室の前の方に歩いて行く。そして黒板の前に立ち、そこにあった白いチョークをつかんだ。
思えば、その時の曖昧な気持ちを書いてしまった事から、すべては始まった。
本当に、人生は何が起きるか分からない。
黒板をカツカツと叩く音が響き、真っ白な文字が並んでいく。
その文字を眺めながら、腰に手を当てて自分自身に満足してうなずく。
その時だった。
教室の後ろから、男性の太い声が響いた。
「おい、そこで何をしている!!」
「あ、ヤバッ」
チョークを戻し、書いた文字を消そうとするが、とても間に合いそうにない。
「あの、ですね、私はここの卒業生で・・・」
「ちょっと、そこで待ってろ」
男性職員が近付いて来る。
捕まると分かっていて、ジッと待っているほどバカではない。勝手知ったる校内だ。逃げ切れないはずがない。
私はそのまま教室を飛び出し、非常階段へと続く鉄扉を開いた。そして鉄の階段を、カンカンと音を立てながら一気に駆け降りる。
一階まで降りて見上げると、上から職員が何やら叫んでいた。
私はそれを気にする事なく、校門に向かって走って行く。
途中、グランドを走る陸上部員たちに手を振り、校門を飛び出した。
息を切らし、膝に手を当てていると、どこからともなく声が聞こえてくる。
「智洋、そんなに急いで走って来なくてもいいのに」
「ああ、でも、まあ、いいじゃん」
「まったく、最近は不審者が多くて困るよ」
そうボヤキながら、男性職員は黒板消しを手に取った。そして、黒板に書かれている文字を見て、手が止まった。
いまでも ずっと 智洋が好きです
いつまでも あなたを愛しつづけます
書いたことすら記憶になく、手紙を読んでこに来てしまった。
冬休みの学校は、物悲しくて好きではない。
すべてが灰色に染まり、廃墟のような気がする。
金網越しにグランドを覗き込むと、陸上部員たちが一生懸命に走っていた。
坂道を登り切り校門をくぐると、あの頃に戻ったような気がしてくる。
周囲を見渡し、誰もいない事を確認して中に入った。
校舎はあの頃と同じで、何も変わっていない。
「失礼しまーす」と誰もいない廊下でささやき、懐かしい階段を上がって行く。
2年3組があった教室には、今も同じプラスチックのプレートが掛けられている。教室の中を覗くと、当然のように誰もいなかった。
私はそのまま、教室の中に入った。
こんなところを見付かったら通報ものだけど、まあ、卒業生だと言って頭を下げれば許してもらえるだろう。
うん、たぶん、大丈夫だ。
一歩ずつ奥へと進み、智洋が座っていた席で立ち止まる。
「智洋・・・」
思わずこぼれた名前に自分で驚き、その席から離れた。
そして、一番奥にある窓際の席に座る。
懐かしい景色。
教室の中をグルリと見渡し、視線を窓の外に向ける。
陸上部員たちが、あの頃と同じように走っている。
「泣いてばかりいる私を笑いますか。
10年後の私は、今の私を見て笑いますか・・・か」
手紙の内容を思い出し、書かれていた言葉を反芻する。
「残念なことに、答えなんて見付からない。
でもね、それを探して人は生きてるんだよ・・・それが10年後の、今の私の答え」
そうつぶやきながら、教室の前の方に歩いて行く。そして黒板の前に立ち、そこにあった白いチョークをつかんだ。
思えば、その時の曖昧な気持ちを書いてしまった事から、すべては始まった。
本当に、人生は何が起きるか分からない。
黒板をカツカツと叩く音が響き、真っ白な文字が並んでいく。
その文字を眺めながら、腰に手を当てて自分自身に満足してうなずく。
その時だった。
教室の後ろから、男性の太い声が響いた。
「おい、そこで何をしている!!」
「あ、ヤバッ」
チョークを戻し、書いた文字を消そうとするが、とても間に合いそうにない。
「あの、ですね、私はここの卒業生で・・・」
「ちょっと、そこで待ってろ」
男性職員が近付いて来る。
捕まると分かっていて、ジッと待っているほどバカではない。勝手知ったる校内だ。逃げ切れないはずがない。
私はそのまま教室を飛び出し、非常階段へと続く鉄扉を開いた。そして鉄の階段を、カンカンと音を立てながら一気に駆け降りる。
一階まで降りて見上げると、上から職員が何やら叫んでいた。
私はそれを気にする事なく、校門に向かって走って行く。
途中、グランドを走る陸上部員たちに手を振り、校門を飛び出した。
息を切らし、膝に手を当てていると、どこからともなく声が聞こえてくる。
「智洋、そんなに急いで走って来なくてもいいのに」
「ああ、でも、まあ、いいじゃん」
「まったく、最近は不審者が多くて困るよ」
そうボヤキながら、男性職員は黒板消しを手に取った。そして、黒板に書かれている文字を見て、手が止まった。
いまでも ずっと 智洋が好きです
いつまでも あなたを愛しつづけます


