アラビアンナイト


ゆっくりと奏太の香りと唇の温もりがなくなっていって初めて

「なっ…ど、どうして…!?」

って言えた。

「言ったでしょ?俺のことを見て欲しいから。
う〜ん、ちょっと違うかな?
俺のこと "だけ'' を見て欲しいから」

またちょっと意地悪な笑顔でそう言うと、

「そろそろ戻らないと皆が心配するね」

なんて。

あっという間にいつも通りの雰囲気に戻った奏太は、おもむろに私の手を取ると、元来た道を戻って行った。

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