アラビアンナイト


でも、高藤さんがセリム君の言葉に追い詰められたようにしてあの場を離れた後から、彼女が私に見せた笑顔と、見たこともない彼女の泣き顔とが私の頭の中をチラつくようになった。

そして、斧田さんたちと一緒に随分遅れて宿泊施設に戻った私たちの目に、桂木さんや辻井君に挟まれて本当に泣いている高藤さんの後ろ姿が飛び込んできたとき…。

私の心の中で、何かが音を立てた気がした。


仲のいいグループに囲まれていたはずの私がバスで吐いてしまったときに、1番に助けてくれたのはジェイク君だった。

おまけにその状況に困り果てていた私を救ってくれた真の救世主は高藤さんだった。

陰で彼女の悪口を言っていた私を、当の本人に助けられるっていう結果にものすごく戸惑ったけど。

彼女はそれについて一言も責めなかった。

それどころかお湯に流そうとかわけのわからないことを言って笑ってごまかして…。

おまけに私が斧田さんたちといて楽しいと思ったことがないことをそれとなく指摘してきた。

彼女にしたら指摘したのではなくて、なんとなく感じていたことを言葉にしただけなんだろうけど。

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