溺愛されてもわからない!
田舎から都会へ


さて家に帰ろうと思ったら
教室のスピーカーから校内放送が流れてきた。

【校庭にイノシシが山から降りて来ました。排除するまで学校から出ないようにしましょう。繰り返します……】

事務の先生が慣れた様子で声を流す。
転勤早々の春なんて
イノシシ見て叫んでたのにね。
慣れって怖い。

イノシシは自分が変な場所に来たパニックで余計暴れている。

不安だよねー知らない場所って
どうして降りて来ちゃったのよ。
役場の専門部隊がライフル持って来る前に、早く山に帰りなさい。

「今日は鍋かな?」

走り回るイノシシを見ながら男子が言うので、私と友達はさりげなく蹴りを入れ校庭を見守る。

正面玄関で先生達は動物撃退用の催涙スプレーを持って並び、反対側で校長が猟銃を空に向かって鳴らす。

青い空にズトーンと大きな猟銃の音が響くと
イノシシは興奮してそちらの方に突進し
音に誘導されて山に帰って行った。

教室に拍手が起こる。

めでたし。めでたし。



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