溺愛されてもわからない!

「それは一夜も心配してる」

「注意する」

「それでよし。ここでいいよ、もう帰れ」

昔ながらの商店街に入る手前で
夢君は私にそう言う。

「いいか」

背の高い夢君が背中を丸め
背の低い私の目線に合わせ
ジッと目を見る。

切れ長の目が綺麗。
赤い髪がふさふさしてる。
ライオンさんの赤い髪。

「無防備になるのは、俺の目の前だけにしろ」

「夢君」

「それは俺だけに見せる顔でいい。わかったな」

「はい」

「よし、帰って寝る。寝不足」

「枕が合わなかった?」

「ばーか。気になる女の子が隣で寝てるんだぞ、寝れるワケないじゃん」

サラッと笑って言い残し
夢君は私の前から走り去る。

赤い髪が揺れてる。

気になる女の子

私……かな。

木枯らしの冷たさを忘れ
足元に舞う枯葉がハートに見えた朝だった。
< 143 / 442 >

この作品をシェア

pagetop