溺愛されてもわからない!

「無理して入れてもらえたからすぐ出よう。ちょっと急ぐよ」

「うん。ちょっと待ってね」
財布財布。
お金確認しなきゃ。都会は高そう。カット代金2000円じゃ足りないかも。

「いいよ。僕が出してあげる」

「それは申し訳ないもん」

「高校生は20%引きだから大丈夫。それにすみれちゃんにかかるお金は喜んでうちの和彦さんが出すよ。後からあっちに請求するから気にしないで」

20%オフなんだ
それは嬉しい。

「急ごう」

一夜に引っ張られてそのまま家を出る。
なんだか
不安な気持ちでいっぱいになるのは

私がまだ田舎のタヌキちゃんのせいなのか。

「服はその服装が好きなの?すみれちゃんが来る前に田中が選んで用意してたはずだけど」

そう。
申し訳ないぐらいに服も靴もバッグもクローゼットに最初から入ってた。
それはとっても品があって
おしゃれな雑誌に載っているような可愛い服が入ってたけど、似合う気がしなくて袖を通せず、田舎で着ていた服ばかり着ていた。

てか
田中さんが選んだの!

スゲー。

「僕が選べばよかったね」

近くの駅の改札口に入り、タメ息混じりで一夜が言う。

「僕も正直言って、再婚に賛成してなくてさ、すみれちゃんも椿さんも財産目当ての嫌なヤツって思ってたんだ。だからノータッチで協力しなかった。今はすみれちゃんも椿さんも良い人なのがわかって、ふたりとも好きだから問題ないけど」

もっと突っ込んで聞きたかったけど
ちょうど電車が来たから突っ込めないで終わってしまった。
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