溺愛されてもわからない!

「ごめんごめん。言い方が悪かった。すみれちゃんは可愛いし、そんな意味で言ったんじゃないんだ。ごめん」
焦ったように一夜は私の腕をギュッと引き、自分の胸の中に入れる。

おいっ!

「だからハグ禁止!」

「痛い痛い折れる!」

私をつかむ一夜の腕を逆に捕え、思いっきりひねってやると一夜が悲鳴を上げた。
まったく油断も隙もありゃしない。

「そーゆー意味じゃないんだ、本当にごめん」
必死で謝ってくる一夜。

「いいよ。だって事実だもん」
ダサい田舎のタヌキちゃんだもん。
わかっております。

一夜は私の顔をジッと見るので
恥ずかしくて顔を下げると

「髪はどこでカットしてたの?」

「高野理容院。高校生2000円。顔そり付」

「理容院って?」

「もう1件あってずっとそこに行ってたんだけど、そこのおじさんがもう80越えでさ、上手だけどやっぱお年頃の高校生になった私達は、高野さんのおばさんが一番かなって思って変えたばっかり」

「カット上手?」

「うん上手。ハサミひとつで30年。3歳から95歳のおばあちゃんまで高野のおばさん。安心して……」

「すみれちゃん」

「何?」

「僕の行きつけのとこでカットしてこよう」

一夜は真剣な顔でスマホを取り出し電話をかけた。

そういえば伸びてきたかも。
どうしていいかわからないから
そろそろお母さんに切ってもらおうと思ってたから丁度いいかな。
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