溺愛されてもわからない!

本当は不安でいっぱいなんだ。
雫さんは綺麗で優しいから
夢君が雫さんの気持ちに気付いて
雫さんと付き合うんじゃないか……って不安。

それに
こうやって
ツーショットで会ってるのがバレて
けっこう親密になってきている私と夢君がバレたら、きっと雫さんはショックだと思う。

でも
夢君とふたりの時間は嬉しくて幸せで。

頭が混乱中。

「井口がどうした?ケンカした?中に入ってやるぞ」

「違うんだ」

何を言おうとしたんだろ私。
雫さんの気持ちを言おうとした?
それはダメでしょう。
頭が本当に混乱してるな。人の気持ちを勝手に言っちゃダメ。

「雫さんが優しくて世話になってる話をしたかっただけ」

「いきなり?」

「うん」

「変なすみれ」

夢君は疑わず笑って遠くを見てから「あ、ウワサをすれば」って手を上げる。

私は夢君の目線の先を見て身体が固まる。

そこには
雫さんが私服でひとり立っていた。

彼女は強張った顔をし
店先でたい焼きを食べながら、のん気に語る私達をジッと見ていた。
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