溺愛されてもわからない!

「ただの金融業じゃないですよね。極道系の方ですよね」
突き刺さるように言ってやると
「そうです」って、田中さんは素直に認めてその場に膝を着く。

そんな部屋の入口で座り込まれても困りますわ。
私は手招きをして中に入れ
じっくりと話を聞く。

和彦さんは大きな組の若頭さんで
その目線だけで誰もが凍りつくような
怖い若頭さんだったそうだ。

仕事もできて(どんな仕事だ)幹部の信頼も厚く。
組を任されてしまった。

でも本人
そんな大きくする気もなく
ごくごく普通に(普通ってなんだ)
極道の仕事をしてるつもりが

上からも下からも慕われ
若手がだんだん増えてしまい
組も大きくなったらしい。

若くして結婚して
エロい一夜君が生まれ
しばらく平和に過ごしていた後(平和ってなんだ)
ストーンと時間を空けて
小生意気な月夜君が生まれて

幸せに暮らすつもりが……奥さんが月夜君が生まれてすぐ……若い男と逃げてしまった。

絶望の組長。

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