溺愛されてもわからない!

部屋に戻ろう
自業自得のおバカさんな私。

「ごめんなさい」
小さく謝って一夜に背中を向け
部屋に戻ろうとすると

背中から一夜が私を抱きしめる。
一夜の香りがふんわりと私を包む。
それは
とても大切な物を抱くように優しく包んでくれる。

「そんなすみれちゃんを好きな僕は……もっとバカ」

私は首を横に振ると
一夜は私の耳を甘噛み。
抵抗しない私を見て「殴ってこないね。そこまで重症?」って、やっと笑う。

一夜の笑い声を聞いて
心がホッとしてまた涙が出てくる。
泣きすぎだよ私。
恥ずかしくて涙を拭いて一夜に「離して」って弱い声で抵抗。すると一夜は簡単に身体を離して私の顔を見つめる。

久し振りに見る
優しくて穏やかな表情。
見惚れてしまうくらいの王子様顔。

「みんな心配してた。明日は元気な顔を見せて」

「うん」

「強いすみれちゃんが月夜の自慢なんだって。ガッカリさせるな」

「うん」

「友達に話をして、もう一度夢と話してごらん。そしてダメなら僕が溺愛するから大丈夫」

「それは遠慮するよ」

「安心して前に進みな」

「一夜」

「何?」

「ありがとう」

私はお礼を言って一夜の部屋を後にした。

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