溺愛されてもわからない!

ずーっとずーっと
ずーーーーっと
田中さんとお勉強。

「俺もおべんきょー」って、月夜がひらかなドリルを持って隣に座ろうとしても、月夜を目で威圧して座るのを拒否。休み無しのノンストップ。昼ご飯も夜ご飯もトイレもお風呂も時間を決められるし。夢君との電話も5分という時間規制あり。誰か……助けて。

「おとーさーん」
最後の手段で娘は父親に泣きつくけれど……和彦さんは苦しそうに目をそむける。

組長より強い若頭。

「すみれ。頑張って」
ひとりニコニコ笑顔のお母さん。

うん。頑張るよ。泣きながら頑張るよ。

夜の11時にコーヒーを飲みながら数式と闘ってたら、一夜が帰って来た。

「頑張ってるねー」

軽ーい感じで言って
冷蔵庫から炭酸水を取り出して私に隣に座る。
女の子の匂いがして嫌だった。

「そこ座らないで、気が散る」
イラっとして一夜に言うと「はいはい」って笑われた。バカにされてる気分。

「一夜さんは今回のテストは大丈夫でしょうか?」

「僕は大丈夫。わからない箇所はないから問題ない」

頭いい奴は違うなぁ
言ってみたいよそのセリフ。

「あ、田中。例の話を進めておいて」
さりげなく一夜は田中さんに言い、田中さんは眉をひそめた。

「組長は断るつもりです。まだ一夜さんも先がわからないですし」

「いや、いいよ。うちの和彦さんも何度も断っていて、そろそろヤバいでしょう」

「しかし……」

「僕から明日でも父さんに言う」

「一夜さん」
いつも一夜の言う事は素直に従う田中さんなのに、今回は引かない……どうしたんだろう。何の話?不思議そうに何度も田中さんと一夜の顔を見比べる私に田中さんは気まずそう。

「おやすみ。すみれちゃん頑張ってね」

一夜は私の髪をくしゃっと撫でて
そのまま振り返らずに二階に行ってしまった。

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