溺愛されてもわからない!


その時

倉庫の扉からギリギリと大きな音が走り
気のせいか
扉がゆがんで動いてる。

男達の押さえつけてる手が緩み
私も音が聞こえる方向を見ると
もう一度
さっきより強い音が響き扉が壊れる。

大きなフォークリフトが、メキメキと扉を破壊して倉庫と外を繋ぐ。

冷たい風がここまで届き
フォークリフトの後ろ
黒い高級車から数人の人影が降りる。

「おまえら……命いらんのか?」

外の空気より冷たい
お父さんの声が私に届いた。

「すみれちゃん!」

「すみれ!」

一夜と夢君の私を探す声が聞こえ
私は喉の奥から大きな声を出し
2人に助けを求める。

「一夜!助けて一夜!」

私の声に反応し
まっしぐらに駆け寄る一夜と夢君。

後の流れはうっすらしか覚えていない。

スローモーションのように男達が逃げようとして、田中さんの金色の髪が素早く動き、長い足で蹴り上げ、強い力で簡単に男をねじ伏せる。

他の逃げようとしている男達も組員さんに簡単に捕まり、この世のものとは思えないくらいの叫び声を上げていた。

「すみれちゃん。もう大丈夫だよ」
一夜は苦しそうな顔で私の顔を見て、自分のブルゾンで下着姿の私を包んでくれた。あったかい一夜の香りして安心して泣きそう。

「痛くないか?大丈夫か?」
夢君も目の置き場が困るような顔で、優しく私の頬を撫でてくれた。

「夢君、一夜……怖かったよ」
身体をガタガタ震わせて泣きながら言う私。

身体が崩れる。

私は
どちらの胸に飛び込めばいいのだろう
誰が受け止めてくれるのだろう。

一夜のブルゾンごと
グラッと体勢を崩した私を受け止めてくれたのは……。



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