溺愛されてもわからない!


身体が痛くて目を覚ました。

ぼーんやりと視界に広がるベージュの天井。
機械の音
腕に何か巻かれてる
点滴のパックが見える
私、点滴してるんだ。
人生初の点滴。お母さん画像撮って。

頭痛い
身体痛い
両方ズキズキ
ついでに顔も痛い。

「すみれ!」

目を覚ました私に気付いて
沢山の人が私を見下ろす。

お母さん。お父さん。夢君。一夜。
田中さん。雫さん……雫さん嬉しい。
ソファで月夜が気持ちよさそうに寝ていた。
オールスターキャストじゃん。

「気分はどう?痛くない?」
お母さんがストロー付のポカリを口元に運んでくれたから、私は小さく口を開き喉を潤す。

美味しい。

「あちこち痛いけど大丈夫」
かすれた声で返事。
思ったより声が出ない事実。弱ってるのか?

「CT撮ったけど問題なかったからね。頭を殴られたみたいだけど、大きなたんこぶになって腫れてるだけだから。寝返り打ったら痛いけど脳に異常はないから。あと切り傷と打撲と……今は痛み止めの点滴してる。血圧も安定してる。怖かったね、無事でよかった」

お母さんは早口でそう言い
私の手を握りながら泣きだした。

大事な身体なのに心配かけちゃった

そして怖かった
助かってよかった
色んな感情がこみ上げて涙が溢れる。



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