少女たちの選ぶ道
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ゴリラの話は思っていたよりも長くて一時間目の授業を潰したぐらいだった。
「やっと解放されたね…」
「優子は寝てたじゃん」
「まぁ、そうだけど」
授業が潰れたのは嬉しかったけど授業を潰してまで話すような内容じゃなかった。
大人からしてみれば重要かもしれないけれど中学生であり、まだ子どもである私たちにとっては“どうでもいい”と思ってしまった。
これが大人と子どもの差
中学生はまだ大人への階段を上っている途中であり、無理して大人びて変わろうとしても変わることはない。
変わる必要性は感じない。
早く大人になりたくても、抑えられ握り潰されてしまうのだから。
「アタシ、あのクラス嫌い」
優子は自分のクラスを嫌っている。
理由は女子校特有の蜘蛛の巣のように糸が張り巡らされているから。
主導権を握っているならまだしも優子は針を刺され握られている立場にいる。
カースト制度で一軍、二軍、三軍があるとしたら優子の立ち位置は三軍の位置になる。
大人の勝手な事情で共学校から女子校になってしまったのだから仕方ないと諦めてる私にとっては…
「…どうでもいい」
「沙紀は強いね。アタシは憂鬱だな」
強くなんかない。
どうでもいいだけ。
だから寧ろ弱いかもしれない。
私は自分の立ち位置をよくわかっていないし気にしてもいない。優子以外とは話さないし関わることも少ない。
無口だし、周りに合わせて会話をしたり笑ったりするのが苦手だから一人でも別に構わない。
悪口の言い合いや陰湿なイジメとかも私は傍観者でいることがある。手を差し伸べようとしたこともあるけど断られてしまった。
…優子に。
他の奴らは、私が怖いのか何なのか理由は知らないけれど私が傍にいると誰も優子には手を出したりはしない。
無表情、冷たい、クール、怖い。
普段、笑ったりしないせいで勝手に押し付けられた私の印象。
私よりも口だけの約束や簡単に嘘をつく人の方がよっぽど怖いと思うけど。
『君たちにもいるだろ?“親友”』
一年生の時に担任の長谷部先生が、ふと授業中に私たちに聞いてきた。
ーー当たり前じゃないですか~
ーー寧ろクラスメイト全員親友だよ!
反吐が出るかと思った。
口だけではいくらだって言える。
だから簡単に優子をイジメることも出来るし『死ね』とも言える。