それは薔薇の魔法~番外編~
その花との別れ、喪失
「晴れてよかったわねぇ」
「えぇ、」
綺麗な青空が広がる城内の庭でローブを羽織ったマリーとジルバさん、そしてローズちゃんが旅立ちの準備をしていた。
こうやって実際に見ると本当に行ってしまうのだと哀愁を感じてしまう。アランにとってのジルバさんのように私にとってもマリーはとても大切な友人になってしまったのだもの。まぁそれは私だけではないみたいだけれど。
「ほら、ローズ。お兄ちゃんにばいばいしないと」
「やぁ、やだあぁ…ひっく、おにいちゃ、」
ぽろぽろと大きなピンクの瞳からとめどなく涙を溢れさせていやいやとシリルに抱き付いたまま離れない様子のローズちゃんにシリルまで泣きそうな顔で困っている。
シリルは他の子と比べると早熟しているけれどまだ子どもだものね。きっとローズちゃんの感情に引っ張られているのだろう。
ぐずるローズちゃんをマリーが抱き上げてアランもシリルを抱きしめる。というかシリルがアランに抱き付いたというのが正しいかしら?あらあら珍しいこと。
「ほーら、ローズもシリル坊もこれが永遠の別れってわけじゃないんだからもう泣かないの。ほっぺたが落ちちゃうよー?」
「ジルにぃ…また会えるよね?」
「うんうん、会える会える。シリル坊の成長した姿見たいからねぇ」
わしゃわしゃと慰めるにしては少々乱暴にジルバさんがシリルの頭を撫でる。アランの友達っていうのもあるんでしょうけど、シリルもジルバさんに懐くのは早かった。
ローズちゃんほどではないにしろ潤んだ紫の瞳から雫が落ちないようにしながらもシリルはこくんと頷いた。それを見てニッコリと見惚れるように笑うジルバさんはそっとその手を放して。
「じゃあまたな!」
ジルバさんの明るい顔とマリーのやさしい顔、まだ涙は浮かんでいるものの精一杯の笑顔を浮かべたローズちゃんに私たちは手を振って別れた。ほぼ数時間後、その笑顔が永遠にみられなくなることなんて考えもせずに。