クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~


「卓ちゃん、ああ見えて悪い人じゃないですから。私のことが好きでどうしていいか分からずにあんなことしちゃっただけですし。不器用な人なんです」

〝まったく仕方ないな〟とでも言わんばかりの笑みを浮かべられて、反応に困る。
私から見ると、どう見ても〝悪い人〟にしか見えなかったんだけど……。

まぁでも、私なんかより、ずっと長い時間一緒に過ごした井村さんの言う事が正しいんだろう。
……たとえ、どんなに信じがたくても。

「どれくらい付き合ってたんですか?」
「一年ちょっとです。私も、本当に好きで付き合い始めたんですけどね。いつの間にか、変わっちゃって」

井村さんが、プラスチックのスプーンでティラミスをすくいながら答える。

一年ちょっとも一緒に居て、お互いに好きだったのに、急に別れを告げられたら……。
そう考えると、あそこまでじゃないにしても、諦めきれない気持ちはわかる気がした。

行き場のない恋心を持て余しているのは私も同じだ。

「なんで気持ちって、変わっちゃうんでしょうね」

だからそうもらすと、井村さんはキョトンとしたあと、呆れたように笑った。

「なに言ってるんですか、瀬名さん」

井村さんが、おかしそうに言う。

「変わらない気持ちなんてあるわけないじゃないですか。ただ、変わる速さと方向が違うだけで、気持ちなんてどうあがいたところで変わりますよ」

思わず声をのむほど、衝撃的な言葉だった。

別に、恋が永遠だとか、そんな夢物語を描いていたわけじゃない。
それでも、変わらない想いはあるんじゃないかとどこかで思っていた。




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