クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
「なんだ、それ」
「だって……優しいから」
ぐいぐいと、眠気が意識を引っ張る。
完全に眠りたいのに、熱が高いせいか、そうできない。
ふわふわと、境目を彷徨っていると、八坂さんの手が頭を撫でた。
「俺が優しくすんのは、めぐにだけだ」
もう、頭は働いていないから、音としてだけ聞いているような状態だった。
眠っているのに、声だけ聞こえるみたいな、不思議な感じだ。
「ずっと……めぐだけだ」
掠れた声が耳に落ちる。
彼女がいるくせに。嘘つき。
そんな感情は、熱に抑えこまれ声にはならなかった。