クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~


「迷惑かけてしまって、すみませんでした」
「いや、俺が勝手にしただけだし。それより、腹減ったろ。なんか作るか?」
「えーっと……食材は食パンと卵くらいしかないですけど……」

冷蔵庫のなかは空っぽに近かった気がする。
確認しようとベッドから下りると、八坂さんが止めた。

「ああ、いい。俺が作るから。キッチン借りるな」
「え、でも、そこまでしてもらうことも……」

言い終わる前に、八坂さんが冷蔵庫を開ける。

いくら元彼だからって、人の家の冷蔵庫を勝手に……と思わず呆れて笑ってしまう。

私のものは自分のもの同然に考えているんだろう。
……もう、そんなわけないのに。

微熱を患う身体に痛みが広がり目を伏せると、八坂さんが冷蔵庫のなかからなにかを見つけ出したみたいで話しかけてくる。

「あ。ハムあるから、それも使ってなんか適当に……でも消化に悪いか? 肉系って病み上がりにはよくないんだっけ?」

そこまでしなくていいって言っているのに、私の言うことなんてちっとも聞いていない八坂さんが難しい顔をして見てくるから、諦めて答えることにする。

「いえ。消化がどうかは知りませんけど、お腹の風邪でもないので、大丈夫かと」

消化にいいものの方がいいんだろうけど、熱もだいぶ下がっているし、食欲があるなら問題ないだろう。
もともと胃腸は弱くないし。

そう判断して言うと、八坂さんは「じゃあ作るから、それまで大人しく寝てろ」と笑顔で言った。


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