クールな彼の甘い融点~とろけるほど愛されて~
目が覚めると、部屋の中はもう明るかった。
つけっぱなしになっているテレビが、ゴルフのトーナメントを映し出している。
スポーツチャンネルみたいだった。
横になったまま、背伸びをする。
それから、やたらと布団が重たいことに気付いて視線を移すと、二枚の毛布がかかっていた。
一枚は、クローゼットに閉まっていた冬物だ。
それがなんで……と考えてから、ハッとして上半身を起こした。
部屋を見ると、ベッドのすぐ横の床に、八坂さんが寝ている。
Yシャツ姿のまま、自分の腕を枕代わりにして眠る姿を見て、昨日の夜のことを徐々に思い出した。
朦朧としていたから、あまりよく覚えていない。
でも……八坂さんと、なにか話した気がする。
ジェントルマンがどうのって、そんなようなことを……。
考えていると、八坂さんが寝返りを打とうとして、ローテーブルに腕をぶつける。
「いてぇ……」と、寝言みたいに呟いて眉を寄せた八坂さんが、ゆっくりと目を開け……そして、ガバッと起き上がった。
「あー……俺、寝てたのか……。悪い、大丈夫か?」
ふぁ……と欠伸を噛み殺しながら言われ、うなづく。
「いえ、私のほうこそすいません。おかげさまで昨日よりだいぶ楽になりました」
「顔色も少しよくなったな。とりあえず熱計れ」
体温計を渡され、言われるまま熱を計る。
八坂さんは立ち上がると、ひとつ背伸びをした。
背が高いから、背伸びをすると手が天井につくんじゃないかと思ってしまう。
「顔洗わせて。あとトイレも」
「はい。タオルは洗面所の横の棚に入ってるので、自由に使ってください」
「ん」と短く返事をした八坂さんが、洗面所に入る。
数分して八坂さんが戻ってきたと同時に、体温計が音を立てた。
確認すると、七度三分。だいぶ下がっている。
数値を見て、八坂さんはホッとしたように表情を緩めた。